2012年05月24日
緋色のやわらかな光がながれる景色をつつむ。夕暮れとも、もちろん朝のそれとも違う、ふしぎな暗さの中をはおったパーカーをなびかせカブは走る。
はっとして起きると時計は午前7時23分を指している。電話してまず謝罪、これからすぐ行くとだけ言って電話を切る。寝ぐせのついた頭にヘルメットをのせスニーカーをつっかけカブに飛び乗る。朝なのに左手に持ったサングラスをかけているように錯覚してしまう異様な薄暗さが、ショーの始まりを知らせていた。
金環日食を見るために7時20分に約束していたのに、起きたのは7時23分。だが7時30分には一駅隣に住む友達の家の前へ。あらためてご近所さんってすばらしい。
その後も「熊本の実家の親は、宮崎まで見に行くそうです」とか「おそらく寝ている」とか「こないだセブンイレブンで日食グラス買った〜。これと一眼レフで明日に臨むわ」など、明日の午前7時30分をどう過ごすかという話題でひとしきり盛り上がる。
その勢いで近所にあるヨドバシカメラのサイトを見ると、日食グラスの在庫に◯マークが付いているではないか!?こうして同僚の丸ちゃんを連れ立って夜の新宿へ。僕は数ある日食グラスの中から藤子・不二雄キャラタイプ980円と目星をつけ、丸ちゃんも社内で注文を受け付けていたのだが、街へ出て事態はそんな悠長な話ではないことを思い知らされる。
その後も「黒い下敷きを5枚ぐらい重ねたらどうだろう。でも黒い下敷きも売り切れてるかも...」とか、「100円ショップにあったサッカーボールの形をしたビーチボール、あれの黒い部分を透かして見るのはどうだ」など、僕らは熱心に代用品開発を進めながら歩き回るも見つからず。
結局1時間半探しまわり、すっかり負け組な気持ちになって会社に戻った僕らは、入荷できなかったことを率直にお詫び申し上げる次第となった。
その後、僕は午前1時前には仕事を終えたが、丸ちゃんは今夜は泊まりこみ、日食は会社から見ると言う。こうしてそれぞれ、ただのサングラスと肉眼で見ることを誓い合い別れた。
そして冒頭の遅刻である。疲れていたのか、出勤時間以外に3回もセットしておいたアラームを止めた記憶がまったくない。自己弁護だがこんなことって自分にはめったにないことなのだ。だが奇跡的にも7時23分に自然に起きた。これは最高にラッキーだった。
こうしてなんとか間に合い、一駅隣り、鷺ノ宮から空を見上げる。
ただのサングラスでは太陽の光になす術がないことを痛感したその時、なんと横で見ていたおばさんが僕らに日食グラスを貸してくれた。※輪になった瞬間は収められなかったけれど、タイトル写真はそのグラスを通して映したものです。
さて2時間後、朝礼時に 「丸ちゃん、俺勝ち組だぜ」といって朝の出来事を自慢すると、
「僕も勝ち組です」と彼は自信たっぷりに返す。
丸ちゃんも会社の隣に住む人に日食グラスを貸してもらったらしい。
こんにゃろ〜マジかよ!そりゃよかった!!
こうして前夜から一転、僕らは勝ち組コンビになったのでした。めでたし、めでたし。
※今回を逃してしまった皆様、そう悲観することはありません。来たる6月6日、金星の日面通過という次回2017年まで発生しないレアな天体ショーがやってくるそうです。
980円はかなりお高いけど...今度こそ藤子・不二男キャラタイプを買うかなぁ!
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