令和の青

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2016年02月02日

桃色に染まれ

桃色に染まれ

昨年の2月から僕の新しい職場となったR社は、社内公用語が英語ということにとなっている。
そのため外国人のスタッフも多い。なのでハロウィンがかなり盛り上がる会社ということは、なんとなく聞いていた。
が、そのときは自分にはまったく無関係のことと思っていた。

10月のはじめ、職場の仲がいい仲間たちの間で新規にLINEグループが立ち上がり、一番の若手ますみん(女性)からイラストと以下のような通知がきた。

今年のR社ハロウィンの我々の仮装についてです!
ジャジャーン!魔法少女まどかマギカです!

気になる配役は...
A野さん→マミさん(黄)
私→ほむらちゃん(黒)
N岡さん→美樹さやか(青)
S本さん→杏子(赤)
葛西さん→まどか(桃)
です!
異論は認めない!!(笑)
※原文ママ

間髪入れず帰って来たN岡くん(男性)のコメントには一言、
「了解です」
とだけある。

その時の僕のきもちは、すべてこの写真の空ジロースタンプが代弁している。

これは了解ですの4文字で受け入れられる話なのか?
異論があるのは配役についてなのか?
そもそも魔法少女まどかマギカとはなんなのか...?

混乱する心と反比例するように、計画は具体的にどんどん決まっていく。
僕と同じ抵抗勢力としてよりどころにしていたS本さん(男性)は
「眉も仕上げてもらえるのかな?」
と早くもオプション内容へと契約交渉が進んでいる。

結局は「僕がやらないとこの計画は頓挫だ」という、半分脅しにちかい展開に僕が根負けした。
ここで魔法少女、正確には魔法おじさんになる契約が締結。

ここからはグループNo1の若手であり、発起人ますみんの独壇場。
事前に購入する衣装についていろんな店へと下見に出かけ、買えない衣装については作るということで下調べし、A野さん(女性)と連携して着々と計画を進めて行く。
本業も忙しいなか、仕事外でそこまで動き回るその情熱だけは、ほんとうに敬服に値する。
おっさんにおかしな格好をさせることに、そこまで彼女を駆り立てるものは何なのだろうか。

以上の経緯を経て、ハロウィンの2週前の週末に、まずは予行演習を行うこととなる。
最初は池袋で衣装を購入。お店に行って驚いた。

まぁ知らないアニメの、知らないキャラクターの服が所狭しと並んでいること!
店員さんはというと、これまたよく分からない衣装を着て接客をしている。
いやはや、これはほんと社会科見学ですよ、みなさん。

ほうけたままの30代男性の僕、40代男性のS本さんを引き連れ、 ますみんとA野さんは計画を着々と進めて行く。

僕とS本さんはといえば「これとこれを買って」と手渡される商品を持ってレジへと並ぶだけ。
ただ、僕の衣装が6980円という値札がついていたのに対し、S本さんのそれは9980円だったので、ちょっとラッキーと思ったりもした。
冷静に考えると、欲しくないスカートを買う時点でラッキーじゃないのだけれど...。

さていよいよ購入。ここでお金を払うともう後戻りは出来ない。正式契約とばかし、ちょっとぴりっとしたきもちでレジへ。

店員さん:
「こちら中古の商品につきまして、ご購入後に商品の返品は致しかねます。
そのため商品の状態についてご一緒にご確認をお願いします」
しんぺい:
「あ、はぁ」
店員さん:
「袖に若干のほつれがございます。こちらご了承して頂けますか」
しんぺい:
「あ、はぁ」
店員さん:
「ファスナーについてはこのような状態です。一度、ご自身で開閉なさってご確認をお願いします」
しんぺい:
「あぁ...大丈夫っすね」
店員さん:
「本商品はソウルジェムが欠品しております」
しんぺい:
「...?」
「...S本さん、なんかないって言ってるみたい(小声)」
店員さん:
「ソウルジェム欠品の旨、ご了承頂けますか?」

店員さんはマイペースに3,40代のおっさんコンビを戸惑わせる。

S本さん:
「...よく分からないけど、必要だったらますみんが何とかしてくれるんじゃない(小声)」
しんぺい:
「あっ...それなしで大丈夫っす」

こんなやり取りを経て、ショートケーキみたいな衣装を受け取った。

お次は日暮里へ。
ここではカツラと、衣装のための生地を買うことに。

ピンクや青の微妙に色味が違うトーンのカツラが、やはり狭い店内にところ狭しと並んでいる。
S本さんと僕はつねに後ろに手を組み、店内のすみっこの方で
「なるほどねぇ...」
などと独り言を言っていた。

N岡くん(男性)はといえば、
「よく考えたらぼくにミニスカートはインシデントだったわ。セクハラになってしまうので...」
などといって、いつのまにか女装組から着ぐるみ組(キュゥべえというキャラクター)へと転身を図っている。
彼は途中から合流したくせに、自分の衣装のもとになる生地探しに同行したのち、次のともだちの待つ場所へと去っていた。
N岡くんの立ち回りの上手さは、ほんとにキュゥべえだなぁと、のちに「まどか★マギカ」を見た後に僕は感心することになる。

ようやく必要なものをそろえた一行は僕のアパートへ。
何はともあれ衣装合わせをしようということで、着替え開始。
戦陣をきったのはS本さん。

仕事はもちろん、女装の先輩でもあるS本さん(結婚式の余興で一度経験があるらしい)の一挙手一投足に、涙が出るほど笑う。

しかしそれも束の間。

自分が着替えを始めると青くなった。いや正確にはピンクになったのだが、心は青くなったのだ。
これを職場でやるのか。
鏡に映る自分に問いかける。

「あんた、なんてザマだよ」

その後、衣装を着たままアニメの鑑賞会開始。

まとか★マギカのファンこそ多いけれど、まったく見たことない状態で、登場人物の格好をして見ているおっさんは珍しいのではなかろうか。
(作品の感想についてはまた別の機会にふれたいと思いますが、たしかにすごい作品でした。 自分、ただの萌えアニメと舐めていました)

さてその後も衣装を着たまま、カツラのカット。ゴミ袋を被ってのサウナ状態に耐えること2時間、この時点で深夜3時。

最後はA野さん&S本さんペア、ますみん&しんぺいペアに分かれ、 男たちは半分寝たまま化粧を施されて完成。

完成の合図直後に思ったのは
「あれ!?S本さん、もしかしてけっこうイケテルんじゃないの!?」
ということ。

先にも述べた通り、結婚式の余興で女装を経験したS本さんはことあるごとに
「自分の女装のレベルはすごく高い」
「女装姿はほんとにイケテル」
と自ら話していた。

その話を聞く度に僕は、
「あぁ、その結婚式でS本さんはべろんべろんに殿酔してたんだなぁ...」と内心思っていた。
が、本当にまんざらでもない。

対して僕はというと、一生懸命に化粧をしてくれたますみんには悪いが、「THEオカマ」という顔になっている。

これはかなりの差があるなぁと、自分ごとながら冷静に思ってしまった。
サッカーでいえば2-0でハーフタイムに突入したイメージだ。

さてさてハロウィン当日、ますみん&しんぺいペアはこの差を埋められるのだろうか。
(後半へつづく)

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